ファインダーは追憶の小窓

写真が好き。だれでも気になる小さなことや奥深いこと。そんなことを皆さんと一緒に考えて写真について深めてみたいと思います。

独り言(その2:フルサイズ)

つれづれに思うことの続きです。

今回は、デジタルカメラで言うところの“フルサイズ”について感じていること。
ただ、僕はデジタルな技術論や知識についてはほとんど持ち合わせていませんので、別のアプローチから“フルサイズ”について考えていることを独り言ちたいと思います。

自分もEOS 5DMarkⅢといういわゆる“フルサイズ”機を持っていますが、いまではミラーレス機でも“フルサイズ”が席巻しているように思います。
巷でも「フルサイズが欲しい」とか「いつかはフルサイズ」という方も多いですよね。
欲しい理由もさまざまで、「解像度が優れているから」という多数派意見から、「フルサイズの方がボケ量が多いから(なんじゃそりゃ・・・)」「フルサイズの方がよく写るから(観念論…)」など人それぞれです。
ちなみに僕が5DMarkⅢを買った理由は単純そのもので、「50mmレンズを50mmの画角で使いたいから」なんですね。
それまでAPS-C機を使ってたんですが、どうも画角に違和感があって使い辛かったんです。

で、フルサイズ機だととてもスッキリと写真が撮れるようになったんですが、これも好みの問題ですね。
あと、買った当初は2100万画素の描写にビックリしたものですが、今では時代が進んだせいか自分が変わったせいか、あまりどうでもよくなっています(笑


ところで“フルサイズ”って言いますが、なにがフルサイズなんでしょうか?
フルサイズっていうと、イメージ的に「大きい」って感じがしますよね。
まあ35mm判フィルムと同じセンサーサイズだからなんでしょうが、じゃあ「35mm判」って“フルのサイズ”なんでしょうか?


これも以前から申し上げていることなんですが、カメラの歴史から見て35mm判フィルムっていうのはフルサイズ(=大きいサイズ)ではなく、そもそもは小型カメラ用のフィルムなんです。
昔々は、写真を撮るのにガラス乾判なんか使って、とても大きいカメラを担いでいたんですね。
分かりやすく申し上げると、明治とか大正が舞台のドラマなんかで、写真館でおやじさんがカメラの幕に潜り込んで「はい、動かないでくださいねー…(ボン!)」なんていうシロモノと思って頂くといいかと思います。
で、これじゃあ持ち運びに不便だということで、ライツ社の天才技師オスカー・バルナックが1914年に35mm映画用フィルムを使って作った小型カメラが「ウル・ライカ」で、これがバルナック・ライカの原型になり、その後35mm判フィルムはライカをはじめ世界のカメラのスタンダードになったんですね。
(このことから、今でも35mm判フィルムのことを「ライカ判」ともいいますね)



…と考えると、「35mm判=フルサイズ」とはまったく言いがたいわけです。
なんで小型カメラ用のフィルムサイズのことを“フルサイズ”なんて言うのかなぁと単純に思うんですね。
カメラの歴史をご存じなかったユーザーからすれば、もしかするとこのことは青天の霹靂かもしれないなぁ、なんて思ったりもするんです。
どうもメーカーが「『35mm判センサー』なんて野暮な呼称はよして『フルサイズ』って言ったほうがカッコいいし売れるぞぉ」なんて考えたんじゃないかなぁと勘繰ったりするんですが、その辺はどうなんでしょうね…?(笑)

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Untitled(Rolleiflexにて撮影)


いずれにしても、カメラ雑誌や薄っぺらいライターの記事に踊らされて“フルサイズ神話”を妄信することなく、ユーザーそれぞれが自分の使い方に合ったセンサーサイズ(デジタルカメラ)の選び方をすればいいのではないかと思っています。
ある有名サイトで見かける「フルサイズの方が解像度が優れているんだぞ!」という極端なスペック至上主義の方は、むしろフィルムの中判や大判カメラを使った方が絶対にいいのです。
そういう方がどうしてもデジタルにこだわるなら中判デジタルカメラを買えばいい。
ボケを期待する人もおんなじです。
センサー(フィルム)サイズが大きいほど、小サイズのセンサーと同じ画角で撮るなら当然に被写界深度は浅くなるし、しかも許容錯乱円が大きくなる分、さらに被写界深度に影響するわけですから。


逆に「自分は鳥とか飛行機撮るからAPS-Cの方が便利なんだ」とか「カメラはいつも持ち歩くことを優先するからコンデジがいいんだ」なんていう選択の方がよほど正しい選択方法だと思います。
現にプロフォトグラファーはそういう観点でカメラを選択していますね。
例えば画像の解像感を優先する風景写真家などは、いまだにフィルムの中判カメラを使っている人が多いそうですもの。

まぁ、自分自身も道具に振り回されないように、今回も自戒の念を込めつつ…