ファインダーは追憶の小窓

写真が好き。だれでも気になる小さなことや奥深いこと。そんなことを皆さんと一緒に考えて写真について深めてみたいと思います。

心に残る写真集〜センチメンタルな旅

10年ほど前の話ですが、写真家の荒木経惟氏の愛描チロが22歳で他界し、当時の新聞等でも取り上げられていました。

その時、僕は、チロと荒木氏の最後の半年間をまとめた「センチメンタルな旅 春の旅」という写真集を購入しました。
900部限定出版とのことだったので急いで買いに走ったのですが、いまはもう古書店でしか入手できません。

チロの最後の写真は、その頃のアサヒカメラの巻頭にも掲載されていたのを見て、かなり衝撃を受けていました。
が、改めて写真集でチロとの最後の日々を感じて、大きなショックを受けました。
当然ですが、同じ猫の写真集でも岩合光昭氏のそれとはまったく異なります。

この写真集と同時に、チロの死の20年余り前に亡くした奥さんの写真集である「センチメンタルな旅 冬の旅」を購入したのですが、これにも大変感銘を受けました。
(この写真集は荒木経惟氏の名作ですから、詳細はここでは省かせて頂きます…)

とにかく、帰ってきて夕飯もそっちのけで2冊を一気に観たのですが、恥ずかしいかなうちの家内の横で涙を流してしまいました。
思えば、写真集で泣いたのはあの時が初めてです。


               


「センチメンタルな旅 冬の旅」に関しては、刊行当時、対談で篠山紀信氏が荒木経惟氏を猛烈に批判し、一時絶好状態になったことは有名なエピソードです。
篠山紀信氏は「奥さんの死に顔を写真集に掲載するなど、あまりにも私的かつ直接的すぎる」との主張だったのですが、僕としては一連の写真と散文から十二分に荒木氏の痛切な心情が伝わるわけで、これは写真芸術として素晴らしいものだと思います。

ここで僕があれこれ申し上げるよりも写真集をご覧頂く方がよほどいいと思いますので、非常に散漫な文章ですがこの辺で切り上げます。
あまりに心に突き刺さったので、この2冊はいまでもあまり開くことができないのです…