ファインダーは追憶の小窓

写真が好き。だれでも気になる小さなことや奥深いこと。そんなことを皆さんと一緒に考えて写真について深めてみたいと思います。

レンズ沼から抜け出すには。

以前にも書きましたが、日本人には道具が好きな人が多いようです。

パソコン、スマートフォン、自動車、その他もろもろの機械についてそのスペックやら特長やらを考察するのがひとつの趣味になっている方々です。

その中で、写真が趣味の方は、写真が趣味なのかカメラやレンズといった機材が趣味なのか判然としない方が結構おられます。

自分が撮った写真をいわゆる芸術的観点から評価するのではなく、描写力やボケ味や逆光性能などを評価している方々がそれに当たります。

ネットでは、写真の芸術性を論ずるよりも機材の特長を論ずるサイトの方が、感覚的ではありますが多いような気がします。

かく言う僕も、20年くらい前はその一人でした。

カカクコムの掲示板を見てはレンズを漁り、評価スレッドに書き込んだりしていました。

僕はキヤノンユーザーだったので、カカクコムでLレンズの掲示板を見るにつけ「ああいつかはLレンズが欲しいなぁ」とか「フルサイズが欲しいなぁ」と垂涎の思いでした。

あの掲示板は誘惑に満ち溢れていて、実際に使っているユーザーがレビューやら作例をアップしているもんですから、見るたびにどんどん欲しくなっていくわけです。

「あぁ、このレンズを使うとこんなに綺麗に撮れるんだ」と。

実際、「綺麗に撮れる」のと「素敵な写真を撮る」とは次元が異なるんですが、機材を愛でることが趣味の人間には「綺麗に撮れる」ことの方が「素敵な写真を撮る」ことよりも優先されるんですね。

すると、「あんな写真が撮りたい」「こんな風に撮りたい」ために「このレンズが欲しい」というふうに、高性能レンズを所有することで作例のような写真が撮れるんだというやや曲がったベクトルに進んでしまう。

高性能なレンズやカメラを持ったところで、綺麗には撮れますが写真がうまくなるわけではない。

そのことに気づくまで、僕は高性能レンズだけでなくオールドレンズにまで興味を持ってしまい、大変な散財をしました(笑)

たいていの人がハマるいわゆる「レンズ沼」は、このような誤解から生まれる欲求のことだと思います。

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確かに初心者の場合、自分がどんなアプローチの写真を撮りたいかまだ定まっていないことが多いし、持っているレンズも少ないので、いろんな情報を仕入れてしまうと「あれもこれも使ってみたい」というふうになってしまうでしょう。

望遠レンズがなければ望遠レンズも使いたい、広角レンズも使ってみたい、マクロレンズで撮ったらどんなふうに撮れるんだろう、とイメージは膨らむ一方です。

単焦点まで手を広げると、さらに欲しいレンズは多くなってきます。

一方、自分が撮りたいテーマなりモチーフが定まっていると、自ずと使うレンズは絞れてきますから、その中で自分に合ったレンズを決めて使っていけばよくなります。

風景写真が主なら広角系と望遠系があるといいでしょうし、電車や飛行機や鳥やスポーツといったものだと望遠系(実はこれが最もコストがかかります)ですし、スナップ中心だったら標準系(35mmや50mmの単焦点もいいでしょう)という感じです。

なので、新しいレンズが出ればその中で買い換えるもよし、気に入ったレンズをずっと使うもよし、というとても効率の良いものになるんですね。

まだ自分が何を撮りたいのかぼやっとされている方は、ダブルズームキットか高倍率ズーム1本で撮って行っても全然問題ないと思います。

それと同時に標準の50mm相当の単焦点が1本あれば十分ですね。

僕は家内用にEOS Kissを持たせていますが、彼女のカメラにはES-S18-135mmの高倍率ズームが付けっぱになっています。

僕もたまにこれで写真を撮ったりしますが、これが実に使いやすいうえにレンズ交換の面倒さからも解放されるので結構オススメだったりします。

 

 

まずは自分がどんな写真を撮りたいか。

いつも申し上げていますがこれが基本です。

レンズやカメラ自体に興味を持ってはいけないことはありませんが、高性能レンズを付けたからといって写真の腕が上がるわけではありません。

ただ、ネットでいろんなレンズのレビューを見るよりも、じっくりと被写体に向き合う時間の方が有用ですし、写真集や写真展で優れた作品に触れる時間が多いほど写真は上手くなります。

初心者の方には、くれぐれもこのことを意識していただき、決して安易に「レンズ沼」なるものに侵されないようにしていただきたいなと思うんです。

あれはお金の無駄ですから。