ボケとパンフォーカス
「ボケ」がいまでは大変重宝されていますね。
私が入っているSNSの写真グループでも、背景をぼかした花の写真が日々たくさんアップされています。
私がいろいろ写真について調べる中では、この「ボケ」はどうやら日本発祥のトレンドのようで、海外でも「Bokeh」としてそのまま用語が使われているようです。
ボケという撮影技法がどういうものかは皆さんご存知のとおりなので説明には及ばないと思いますが、念のためにネットの辞書に載っている意味を掲載すると、
写真におけるボケ(ぼけ、英: bokeh)とは、レンズの焦点(被写界深度)の範囲外に生みだされるボヤけた領域の美しさ、およびそれを意図的に利用する表現手法である。
【出典:Weblio英和辞典】
ということになります。
つまり、アウトフォーカスの部分に美しさや魅力を感じる手法でもあり、自分が写し撮ろうとするモチーフを強調する手法でもありますよね。
ただ、ボケを云々するときに個人的に気になることがあります。
それは、ボケ味といって、レンズそのもののテイストに主眼が置かれて作品そのものの評価や撮影者の意図がすっ飛んでしまっている議論が多いことです。
以前にも書きましたが、日本人は特に機材を愛でる趣向の方が多いようで、写真そのものよりも「このレンズのボケ味はいいね」とか「このレンズのボケはグルグルだからダメだなぁ」とか、写真愛好家の中でもそういうところばかりの会話になっている気がしてなりません。
もちろん、かく言う私もボケはよく使いますし、上の写真のように必然的にボケ写真とならざるを得ない場面もあります。
ただ、ボケ自体を愛でるという傾向は、それ自体が写真を作品として鑑賞する姿勢ではない気がしています。
それは単にレンズの性能や個性を愛でているわけですから。
(下のバナーにレンズがたくさん出ている方は、ネットでレンズをあれこれとご覧になっている方だと思います)
一方で、「パンフォーカス」についての議論や熱い意見というのはSNSやネットなどではほとんど聞いたことがありません。
ボケについて辞典で調べたので、ついでにパンフォーカスもネットで調べてみると
パンフォーカスあるいはディープフォーカスとは、写真または映画の撮影において、被写界深度を深くする事によって、近くのものから遠くのものまでピントが合っているように見せる方法、またはその方法により撮影された写真・映画のこと。絞りを適切に絞ったうえで、焦点を無限遠よりも手前に調整することによって実現される。「パンフォーカス」は和製英語であり、英語では「ディープフォーカス」などと言う。
【出典:ウィキペディア】
とあります。
パンフォーカスの一番身近な例は集合写真です。
旅行や会合なんかの時にみんなで撮るあれですが、あの集合写真でボケ写真はあり得ませんね。
それから、風景写真でも広角レンズで情景全体を写し撮る、というような時はたいてい絞ってパンフォーカスにします。
実際、「写ルンです」は絞りの変更はできませんが、集合写真や旅行先での使用を前提としているので、もともとF10くらいのパンフォーカスの設定になっていたと思います。
また、木村伊兵衛の写真はまるで居合い抜きのようにサッと撮影されているとよく言われますが、スナップショットの場合は被写体が来てから露出を設定してもシャッターチャンスを逃してしまうので、あらかじめパンフォーカスに設定しておきます。(F8〜F11くらいですね)
ただ、パンフォーカスでの撮影は基本的に難しいと思っています。
その主な要因は、パンフォーカスだといろんなものがハッキリと写ってしまうからです。
写真はよく「引き算」と言われますが、ファインダーの中のほぼすべてのものが写ってしまうパンフォーカスだと、自分の表現したい主題をきちんと明確にするのは少々難しくなってしまうので、構図の整理を中心にそれなりのテクニックやセンスが求められます。
なので、私自身もそうですが、ボケ写真とパンフォーカスの写真を比べたときには、やっぱりボケ写真の方が簡単に撮れる気がするんですね。
ボケ写真は魅力的ですし、パンフォーカスの写真には力強さがあります。
どちらも撮影テクニックとしては当然にアリですが、その時々によってしっかりと使い分けたうえでいい作品を撮るようにしたいものだと思っています。