「切り取り」について思うこと
「いい切り取りですね」
僕の写真を見た方から、こういうお褒めのコメントを頂くことがあります。
確かに写真は眼の前の事象を“切り取る”ものです。
が、“切り取る”というのは一体どういう行為なんでしょうか?
情景の一部を単に切り取っているに過ぎないのであれば、写真とはとても退屈なはず。
また、「構図」のことを単純に“切り取り”と言っているのであったとしても、なんだか釈然としません。
先日、スティーブン・ショアーの『写真の本質』を読み返してみました。
彼は写真について「物理レベル」「描写レベル」「メンタルレベル」の大きく3つに分けて説明していますが、「描写レベル」を説明する上で、『平面化・フレーム・時間・焦点』の4つのファクターを挙げています。
僕では彼の写真論をうまく伝えることはできませんので、ご興味のある方は本書を手に取って頂くことをお勧めしますが、ちょっと簡単に4つのファクターについて説明を試みたいと思います。
「平面化」とは、3次元の情景を2次元に置き換えること。
そうすることで、写真ならではの表現が可能にもなります。
(本書ではリー・フリードランダーの写真を使って、視覚的に分かりやすく説明されています)
「フレーム」とは、まさしく構図のこと。
写真のフレームの中に、なにをどう置くか。
それ自体で写真が分かりにくくもなり分かりやすくもなるし、撮影者の意図なども浮かび上がってきます。
「時間」とは、シャッタータイミングと露光時間。
この「時間」のコントロールや被写体とのタイミングによって、写真自体も大きく変わってくることはご存知の通りですね。
「焦点」とは、ピント位置や被写界深度。
これも言わずもがなです。
この4つの要素が同時にかみ合わさったものが、いわゆる“切り取り”ではないかと思うのです。
写真を撮る上で、アマチュアの私達であろうとも描写レベルにおいてこの4つのファクターを意識していることは言うまでもないと思います。
(顕在的か潜在的かは別としても)
ですから、当たり前のことではありますが、“切り取り”という一言の中にも、写真においては実に多くの要素が絡み合っていると考えるべきでしょう。
少々、小難しいことを考えすぎかもしれませんが、こういう理解を自分の中でひとつひとつ行っていくことが、写真表現の幅を少しでも広げることにつながっていくのではないかと考えています。
☆本格的に上手になりたい方はぜひ本書をおすすめします。