ファインダーは追憶の小窓

写真が好き。だれでも気になる小さなことや奥深いこと。そんなことを皆さんと一緒に考えて写真について深めてみたいと思います。

空白の美学は構図の基本

写真の話ではありませんが、ようやく昨年公開された映画「ジョーカー」を観ました。

とっても話題の作品だったし、DCの中でもバットマンが好きなので映画館で観ようとチケットまで買っていたのにアクシデントで観られなかったので今ごろネット配信で観たんですが、やっぱり評判通りすごい作品ですね。

ジョーカーの誕生エピソードはコミックや映画、ドラマによっていくつかあって、どれが正史なのか定まっていないようですが、この映画では差別から主人公が大悪党のジョーカーになっていく様子を描いています。

バットマンの世界をある程度知っているほうがちょっとした部分で「ほうほう、なるほど」などと感じるところもあるんですが、知らなくてもまったく楽しめる内容になっています。

主演のホアキン・フェニックスはこの映画で今年のアカデミー賞主演男優賞の有力候補にもなっていて、堕ちていく主人公を見事に演じてますね。

ダークナイト」でジョーカーを演じて伝説になっているヒース・レジャーに勝るとも劣らない名演です。

まだご覧になっておられない方で興味があればぜひおすすめの映画です。

 

 

なぜ映画「ジョーカー」の話をしたかというと、映画を見ていて気づいたことがあったからです。

それは構図です。

あまり今まで映画を観ていて構図のことを気にしたことななかったんですが、やっぱり「ジョーカー」でも構図の基本はあの“9分割”になっています。

画面を縦に3分割、横に3分割した中のどの位置にモチーフを配置するかというアレです。

もちろん、映画の中の画面は常に動いていますが、印象的なシーンや登場人物が動いていないシーンでは、人物など主要なモチーフはだいたい左右どちらかの3分割ラインに配されています。(その後動いても、やっぱり反対側の3分割ラインへの移動というパターンもありました)

 

ということは、モチーフが配された3分の1以外の部分は背景ということになります。

極端に言うと“空白”でもありだと思います。

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写真を撮るとき大部分の方は、この“空白”を埋めようとして被写体を真ん中に据えようとします。

これがいわゆる「日の丸構図」です。

以前もお話ししましたが、日の丸構図の場合は構図以外のなにかで工夫してモチーフを引き立たせるか何かしないと、作品としての印象度合いが低くなってしまいます。

一番わかりやすいのは記念写真の類で、あの手の写真は撮り手や写り手の記憶のフィードバックにはなりますが、第三者が観た時には「こんなところに行ったのね。楽しそうね」ということくらいしか伝わりません。

いわゆる記念写真では、写真を「心象風景」としては捉えられませんよね。

上の写真は拙作ですが、ほとんど空白です。

女性と思しき足がいわゆる“9分割”ラインに配置されているだけです。

この写真を観た人はおそらくこんな想像をするんじゃないでしょうか?

「ここはどこだろう?」

「この人は女性かな?それとも男性かな?」

「季節は夏?春?それ以外?」

「この人の顔はどんな顔?」

他にもいろんなイメージが観る人の中で作られるんじゃないかと思います。

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これも足だけしか写っていなくて、残りは階段です。

少しシャッタースピードを遅めにしているので足早に階段を上り下りする人物の描写となっていますが、これも観る人によっていろんなイマジネーションが湧くような写真だと思います。

真ん中にある矢印がなんだか意味深に感じる方もおられるかもしれません。

 

こんなふうになんでも空白にすればよいわけではないですが、写真の空白にも美学があると思っています。

ただ、こういう具合にあえて空白を作って構図をとってみても結構おもしろい作品になると思います。

以前の話ですが、デジカメを買ったばかりの女性の後輩社員に“9分割”で構図を作ることを教えてあげたら「すごいこれだけで上手な写真にみえるますね!」ととても納得していたことがありました。

皆さんも時と場合、被写体によっては、あえて空白を取った構図で撮影してみてはいかがでしょうか?

空白の中に、観る側のフリーイメージが投影される一枚になるかもしれませんよ。

 

構図のことを少し本格的に勉強したい方は、この本がわかりやすいと思います。写真も映画も美術でも、構図の基本はやっぱり同じですから。